コーヒーを楽しむ会2026年:『From Farm to Cup』~生産者の情熱と産地の個性を知り、サステイナブルな未来を考える~
2026.10.15

2026年10月7日(水)、兵庫県伊丹市の「東リ いたみホール」にてコーヒーを楽しむ会を開催しました。
今年のテーマは、「From Farm to Cup」。
私たちが普段何気なく口にしている一杯のコーヒー。その一杯が、どのような環境で育ち、誰の手によって収穫され、どのような工程を経て私たちのもとへ届けられているのか。
今回は、コーヒーが生まれる「Farm(農園)」から、私たちが味わう「Cup(一杯)」までにある生産者の情熱や産地の個性に目を向け、コーヒーの未来について参加者の皆さまと一緒に考える機会となりました。
第一講座「おいしいコーヒーはピッカーが作る。コナコーヒー農家の結論」

日本コーヒー文化学会・山岸コーヒー農園の農園主
山岸秀彰氏
第一講座では、日本コーヒー文化学会・山岸コーヒー農園の農園主、山岸秀彰氏を講師に迎え、コーヒーの生産現場についてお話しいただきました。
講演では、コーヒーの栽培から収穫、精製までの工程に加え、特にピッカー(コーヒーの実を収穫する人)の仕事と、その選別の重要性について詳しく紹介されました。
スペシャルティコーヒーでは、完熟したコーヒーチェリーを見極め、一粒一粒丁寧に収穫することが、コーヒーの品質を大きく左右します。
一方で、ピッカーの賃金についても重要な課題が示されました。
講演では、「コーヒー一杯あたりのピッカーの取り分は25銭(1円の4分の1)」という話がありました。
このような低い賃金のままでは、農園主が求める「熟度のそろった実を丁寧に収穫してほしい」という思いと、ピッカーが「少しでも多く収穫しなければ収入を増やすことができない」という思いとの間に、難しいジレンマが生まれます。
農園主は、未熟な実を避け、完熟した実を選別して収穫することで品質を高めたい。一方、ピッカーにとっては、未熟豆や完熟豆が混在していても、より多く収穫することで収入を確保したいという現実があります。おいしいコーヒーをつくるための「品質」と、そこで働く人が生活を維持するための「収入」。
この両方をどのように両立していくのかという問題は、コーヒーの持続可能性を考えるうえで、非常に重要な課題であることを学びました。
第二講座「産地の風味特性について」

ワタル株式会社 大阪支店
支店長 阪口真也氏
第二講座では、ワタル株式会社 大阪支店 支店長の阪口真也氏より、「産地の風味特性について」をテーマにお話しいただきました。
代表的な産地の味の傾向をご紹介いただく中で、同じ生産国であっても、地域によって風味に違いが生まれること、さらに精製方法によっても味わいが大きく変化することを学びました。
例えば、エチオピアのイルガチェフェでは、ウォッシュドはジャスミンやベルガモット、レモン・柑橘、紅茶を思わせる明るく繊細な酸味と、クリーンで軽やかな味わいが特徴。一方、ナチュラルではベリーやストロベリー、熟した果実のような甘さや、ワインを思わせる風味が感じられ、ウォッシュドに比べて甘みや果実感、ボディが強くなる傾向が紹介されました。
また、同じエチオピアでもリム/ジンマなど地域が変わることで、ウォッシュドでは穏やかな柑橘やハーブ、クリーンな味わい、ナチュラルでは果実やスパイス、チョコレート、しっかりとしたボディなど、異なる個性が生まれることも紹介されました。
こうした違いは、国や地域だけでなく、気候、標高、土壌、地形、品種、精製方法、さらに焙煎や抽出など、さまざまな条件が重なり合うことで生まれます。
一杯のコーヒーの味わいは、単に「国」だけで決まるものではありません。さまざまな環境や人の仕事、そして製造工程が重なって、その一杯ならではの個性がつくり出されています。
産地の背景と風味の関係を知ることで、普段飲んでいるコーヒーをより深く味わい、「この味わいは、どこから、どのように生まれたのだろう」と想像しながらコーヒーを楽しむきっかけとなる講座となりました。
第三講座「シンポジウム」

第三講座では、第一講座・第二講座の内容を踏まえ、参加者から寄せられた質問をもとにシンポジウムを行いました。
その中の一部をご紹介させていただきます。
「どうしたらピッカーの賃金や労働環境を助けられますか?」という質問が寄せられました。
第一講座で紹介された、ピッカーの低い賃金と、品質を高めるための丁寧な収穫をめぐる課題を知ったうえで、「私たち消費者に何ができるのか」という問いです。
この質問に対し、山岸氏からは、単純に「ピッカーを助ける」という考え方ではなく、私たちがどのようなコーヒーを選び、飲むのかということが大切であるというお話がありました。
ピッカーを助けることそのものを目的とするのではなく、私たちがコーヒーを飲み、きれいなコーヒー(クリーンカップ)を選んでいくこと。
それは、健康に育てられ、熟度がそろったコーヒーチェリーを丁寧に収穫してつくられたコーヒーを選ぶことにつながります。
つまり、私たち消費者が「どんなコーヒーを選ぶのか」という行動そのものが、生産現場にもつながっているということです。
「生産者を支援する」という視点だけではなく、丁寧につくられた品質の高いコーヒーを知り、選び、飲み続けること。
その選択が、生産者やピッカーの仕事を評価することにつながり、ひいてはより良いコーヒーがつくられ続ける環境を支えることにもつながります。
今回のシンポジウムでは、コーヒーの生産現場にある課題を知るだけでなく、私たち一人ひとりが「消費者として何を選ぶのか」を考える貴重な時間となりました。
まとめ
今回の「コーヒーを楽しむ会」では、コーヒーが農園から私たちのカップに届くまでの背景を知ることで、普段何気なく飲んでいる一杯のコーヒーを、これまでとは違った視点から見つめ直す機会となりました。
一杯のコーヒーの裏側には、自然環境、生産者、ピッカー、輸入・流通に携わる人々など、たくさんの人の仕事と想いがあります。
そして、持続可能なコーヒーの未来をつくるためには、生産者側の努力だけでなく、私たち消費者が「知ること」「選ぶこと」「飲み続けること」も大切です。
「おいしいコーヒーを飲む」という日常の選択が、遠く離れたコーヒー産地の未来にもつながっている。
今回の会を通じて、参加者の皆さまにそのことを感じていただけたのではないでしょうか。
ヒロコーヒーは来年創業50周年を迎えます。
これからも、コーヒーを通じて生産者と消費者をつなぎ、コーヒーのおいしさだけでなく、その背景にある人や自然、そして持続可能な未来について考える機会をお届けしてまいります。

最後になりましたが、
ご参加いただいた皆さま、そして素晴らしい講演をいただいた講師の皆さまに、心より御礼申し上げます。
株式会社ヒロコーヒー
CSR委員会 原田理恵