HOME > 世界のカフェレポート > 日本にサードウェイブは来たのか?〜 out of respect for KISSA-TEN
今、様々な業界で従来の考え方と異なる新たな価値観を創造する動きが高まっている。 ファッションではファストファッションを完全に着こなした若い世代を中心にナショナルブランド離れが加速し(息子に聞いた所では今や1●9でさえ大学生は高いと敬遠するらしい)、ネットで買う事が当たり前となった書籍を扱う街の本屋の多くは廃業や個性を生かしたセレクト系書店へと変化を遂げている。
イノベーションが進む業界ほどこの流れは顕著で、各チャンネルで技術革新が著しいコーヒー業界も例に漏れず世界的な「サードウェイブ・カフェ(第三の波)」の波が押し寄せている。 すでに何度かご紹介してきた「サードウェイブ・カフェ」ではあるが、今回短い期間で「サードウェイブ・カフェ」発祥の地、アメリカの西海岸と東海岸を訪問する機会を得たので、自身の備忘録を兼ねてここに書き留めておきたい。
西海岸の「サードウェイブ・カフェ」は今大きな変革の時期にきている。 大手SNSの資本が加わったショップが相次いでオープンしたり、我々が到着した際にも地元有名バリスタの店舗が同じく地元ロースターに買収されたとのニュースが伝わってきた。ただしビジネスが上手くいっていないというよりは、「サードウェイブ・カフェ」がもっと大きな波になる為の再編が進んでいるといった印象が強く、事実その後訪れたニューヨークでは西海岸発の「サードウェイブ・カフェ」ブランドを数多く見る事が出来た。
西海岸と東海岸では「サードウェイブ・カフェ」の在り方は少し違う様だ。 西海岸には(土地の経済条件の影響も大きいが)日本でいう所の大バコ、大きな客席を有したショップが多い。客席では多くの客がMac Noteを広げ、ノマド・ワーカーの巣窟といった様相である。西海岸ではシアトル系カフェ発祥の考え方でいう所のもうひとつの場所「サードプレイス」を提供しているのに対し、総じてニューヨークの「サードウェイブ・カフェ」はテイクアウトのコーヒーを提供する事で「通り過ぎる場所」に徹している(郊外のカフェはこの限りではないが)。
サードプレイス」を提供出来ないのでは、全国チェーンとの差別化が難しいかと思うかもしれないが「サードウェイブ・カフェ」は続々とニューヨークを目指している。 ここにサードウェイブ成功の要素が隠れている。 彼らは今までありそうで無かった新しい概念を持ち込む事で成功した。 それは単純明快、「コーヒーの美味しさ」を追求したのだ。
日本での大成功を踏まえてコンビニエス・ショップがカップコーヒーを販売するのは世界的な流れの様だ。(2013年コンビニ・コーヒーは実に10億杯!を売り上げた) 一年で驚異的な成長を遂げたコンビニ・コーヒーと“知っている人は知っている”「サードウェイブ・カフェ」。一方は徹底的に合理化した製品であり、もう一方は顧客への付加価値訴求が必須となる製品なので現状はマーケットの棲み分けが出来ているものの5年後にコンビニ店内でコーヒーを飲みながらソファでくつろぐ人がいないと言い切れる自信は私にはない。 果たしてサードウェイブが日本のコーヒー文化にとけ込めるのか?おそらく数年で結果は出るだろう。その時に「喫茶店文化」を取込んだ新しい形、日本版サードウェイブが生まれている事を願ってまとめとしたい。
ヒロコーヒー 焙煎責任者 山本光弘