株式会社ヒロコーヒー
齊藤 豊

2015年10月14日(水)、阪急うめだ本店と日本コーヒー文化学会主催、独立行政法人国際協力機構(JICA)と株式会社ヒロコーヒーの協力のもと、阪急うめだ本店9階「うめだホール」にて「大阪でコーヒーを楽しむ会」を行いました。
昨年同様、今回も約300名のお客様にご来場いただき、誠にありがとうございました!以下、「大阪でコーヒーを楽しむ会」の内容を簡単にレポートしたいと思います。

※ムービーは音が出ます。

まずはじめに、主催者:日本コーヒー文化学会副会長、金沢大学名誉教授の広瀬幸雄先生より開会のご挨拶。
コーヒーを愛する様々なジャンルの方々の学会、「日本コーヒー文化学会」の活動内容紹介も交えながら、「コーヒーの持つ"熱"」を語る広瀬節全開での楽しい幕開けです!

■第一講座  「おいしいコーヒーを淹れるために/抽出の科学」 
石光商事株式会社 研究開発室 博士(工学) 石脇智広氏

コーヒー抽出のメカニズムを踏まえたコーヒーの味を変化させる様々な要素を、科学的観点から、しかも分かり易く解説いただきました。
湯温、粉の粒度、抽出時間、水質、器具による違いなどなど、改めて一杯のコーヒーの味を決める要素がこんなにあること、だからこそ様々な条件に対するコーヒーの味をコントロール出来ること、逆にそのためにもまずは「自分マニュアル」を持つことが大切、ということが分かりました。そこからの様々な豆やシーンへの応用が出来るんですね。
ドリッパーの構造によるコントロールの自由度の違いもお話しされました。入門編から応用編まで、実は最も難しい抽出のひとつであるペーパードリップも、スキルに応じてドリッパーを使い分けることも必要でないかと感じました。

 
■第二講座 「生産者からお客様へ。おいしいコーヒーの生産。

独立行政法人国際協力機構(JICA)"コーヒー生産者輸出競争力強化"研修コースに参加されている研修員、6か国、8名の方にお越しいただき、その中から3か国に自国のコーヒーの生産現場における工夫や情熱をプレゼンテーションいただきました。今回も各国の工夫とプレゼン練習の成果が見られ、彼らの1ヶ月のミッションの集大成を発表する場としては素晴らしい内容となりました!

<ネパール>
ギリ・テクラジさん Mr. GIRI Tek Raj
タパ・マンドゥさん Ms. THAPA Mandu

国内に75ある地区のうち、41地区においてコーヒー生産を行える可能性があり、現在21地区において実際にコーヒー生産が行われています。主な輸出国は、韓国と日本。
この紹介の後、コーヒー生産地の風景を交えた、美しい動画で産地を紹介。有機栽培に力を入れている農園の取り組みに関心を持たれたお客様も多かったようです。
シェードグロウン(木陰栽培)を取り入れて、森林のなかでコーヒーを栽培することで、自然のままの環境に近い状態で、水源を保護する取組も盛んになっているようです。
また、今年4月に発生した震災の影響にも言及。コーヒーを含む25%の生産物が失われたそうです。少しでも迅速な復興を願っております。

<ホンジュラス>
メネス チャコン ネストール ハビエルさん
 Mr. MENESES CHACON Nestor Javier 
ブスタマンテ トレス ジェニー アスセナさん
 Ms. BUSTAMANTE TORRES Yeny Azucena


ホンジュラスでは、経済的にコーヒーは農産品の中で最も重要な産物。すでに200年のコーヒー栽培の歴史があるそうで、11万世帯がコーヒー生産に関わっており
過去3年間、毎年(日本円で)800億円もの経済効果を生み出しています。
また、産地の90%でアグロフォレストと呼ばれる自然の森の木陰でコーヒー栽培が行われています。
国際市場で良い品質のものを見極める技術をもつQグレーダーの認定制度も推進しており、土壌研究、ラボでの品質分析など、高品質コーヒーの追求にも力を注いでいます。
COE(カップオブエクセレンス)でも良品を輩出。最近は日本もメインの顧客になっているようですね。

<ルワンダ>
ンサンジマナ アルバートさん 
Mr. NSANZIMANA Albert

有力なコーヒー新興国ルワンダ。近畿地方とほぼ同じくらいの大きさの国土で、1400〜1900mもの高地に4つのコーヒー栽培地域があります。
これら栽培地域では、年間1500〜1600mmの雨量があり、気温が18〜27度。火山灰土に赤道特有の霧が発生するコーヒーにとって最適な環境です。
日本にはまだ全体の1%程度しか輸出していませんが、量は少なくても、非常に良質なスペシャルティコーヒーを提供していただいています。
COE(カップオブエクセレンス)も行われており、上位の商品には、日本企業が多く入札している将来有望な生産国です。

■コーヒーブレイクタイム

メインイベントの生産者とお客様との交流! 6か国(エチオピア・パプアニューギニア・ルワンダ・東ティモール・ネパール・ホンジュラス)の生産者の方が持って来られた自慢のコーヒーを試飲し,日本のお客様方と直接触れ合って頂く貴重な機会となりました。私たちにとっても、この場でしか見られない光景なんです!

   
   
■第三講座 「さぁ、コーヒーについて語ろう!」 シンポジウム

講義を踏まえて予めお客様からいただいた質問をピックアップし、ステージの生産者の皆さん、広瀬氏、石脇氏、社長の山本がその場でアンサー。
日ごろのコーヒーについての悩み、生産者の報告を聞いて感じた「もっと知りたい!」がたくさん詰まった素敵な質問ばかりでした。

 

Q.生産地では、コーヒーは輸出用に栽培されるのですか?国内消費の状況はどれぐらいなのでしょうか?
A.各国の回答では国内消費は10%以下。2〜3%という国も。
その中で、今回参加した6か国のうち、エチオピアだけが輸出と国内消費の割合が約5:5。コーヒーを飲用する習慣がもっとも長い歴史を誇るだけあって、人々の生活にコーヒーが深く入り込んでいる様子がうかがえる回答結果でした。

Q.コーヒーの「コク」って、何なのでしょう??
A.広瀬先生も石脇先生も、「とてもむずかしい質問ですね…」というお答え。共通してお話しされていたのは「コク」という概念が、その対象によって異なる、また感じる人によっても何を指すかが異なるという点。
さらに山本社長の回答では、海外の味覚表現の中で「コク」を表現する単語に近いものは「ボディ」と訳されていて、「質感」という表現。私たち日本人が日常的に使っているコクという表現は、世界共通の概念ではないようですね。

■最後に

ヒロコーヒーのお店では9月よりサステイナブルコーヒーフェアーを開催しています。
この、「サステイナブルコーヒー」をお客様にご紹介し始めてもう10数年になります。まだまだ消費者の皆様には認知度の低い様々な認証制度や、生産者の皆様の活動。
生産者の皆さんがコーヒーをどのような想いで生産されているのかを如何にご紹介していくか。私たちがこれからも美味しいコーヒーをいただき続けられるために必要なこととは…
私たちにとってもこの「大阪でコーヒーを楽しむ会」は、もはや原点回帰の場となりました。
ヒロコーヒーでは今後もコーヒーにたずさわるものの責任として、サステイナブル(持続可能な)で生産者の皆さんの想いの詰まったコーヒーのご紹介を続けて参りたいと思います!

ご参加くださいましたお客様、本当にありがとうございました。
最後に、ご協力いただきました日本コーヒー文化学会の皆様方、講師の先生、JICA職員の皆様、生産者の方々、本当にありがとうございました!

また来年お会いしましょう!